JONPFレター
JONPFレターについて
JONPFレターは、診療看護師(NP)の実践活動や意見、会員校等が実施したイベント等の成果やさまざまな提案などをレターとして投稿していただき、診療看護師(NP)や会員校に関する情報を、広く社会に知っていただくことを目的としています。
レターでは、
- 会員校における活動報告、情報提供
- 会員校の大学院生の活動報告、情報提供
- 診療看護師(NP)が実践した症例報告
- 診療看護師(NP)と医療スタッフとの連携の実態
- チーム医療において診療看護師(NP)の果たしている役割
- 診療看護師(NP)の制度化等に関する意見や提案
- 投稿されたレターに対する意見
- その他
など、診療看護師(NP)、会員校からの「生の声」を気軽に投稿していただきたく思います。
投稿は事務局(maf-jonpf@mynavi.jp)でお受けしております。
皆様からの投稿をお待ちしております。
日本NP教育大学院協議会 広報委員会
JONPFレター No.9 NP認定資格取得後の卒後研修
愛知医科大学病院 NP部
診療看護師(NP) 若林妙子
私は、令和5年に愛知医科大学病院に入職し、現在2年目の診療看護師(NP)卒後研修を行っています。私が入職したときには、NP部が設立したところであり、卒後研修生は4名でした。現在は2年目6名、1年目7名が研修を行っています。
◆卒後研修を受けようと思ったきっかけ
私は、佐久大学大学院プライマリケア看護コースを修了し、NP資格認定試験に合格した後、市中病院に就職しました。しかし徐々に知識や経験不足を感じ、診療看護師(NP)のタスクシフトの実際やどのように資格を社会に生かしていけるのかを知りたいという思いが強くなりました。そのような時に、他の大学院を卒業した診療看護師(NP)も卒後研修を受け入れていることを知り、思い切って連絡したのがきっかけでした。
◆診療看護師(NP)としての卒後研修の実際について
2年間は卒後研修プログラムに沿って研修を行います。研修は、医学の知識、技術の向上を目指し、高度実践看護師としての臨床実践能力を習得することを目的としています。診療看護師(NP)に求められる能力である7つのコンピテンシーを学ぶことができます。
研修の必須研修診療科は、麻酔科、GICU、ERで、その他の診療科は選択することができます。短期間でしたが、放射線科や生理機能検査室、感染症管理室で研修を行いました。医学的な教育は医師から直接指導を受けます。研修で得た医学的な知識を、診療看護師(NP)としてどのようにチーム医療に活かしていくことができるかということを考えながら取り組んでいます。
麻酔科、GICU、神経内科での研修の学びについて報告します。
【麻酔科:8ヶ月】
麻酔科での研修では、小児から高齢者までの様々な手術の全身麻酔を1~3症例/日担当します。その担当症例の術前から術中、術後における周術期管理の実際を学ぶことができました。具体的には、麻酔中の循環や呼吸管理に関する知識や技術などを麻酔科医から学び、診療看護師(NP)からは手術を受ける患者に対する高度実践看護の指導を受けました。
私はこれまで手術室での勤務経験がありましたが、診療看護師(NP)として研修では、「命を預かる」という重責を強く感じました。診療看護師(NP)としては、安全な医療を提供するために医学的な知識や技術を理解することは最も重要なことであり、同時に手術を受ける患者一人ひとりの力を最大限に引き出し、安心して手術を受けることができるよう支援することも大切であると考えます。そして、手術が必要になることがあれば、背景やその先の生活を見据え、身近な存在となり支援していきたいと思います。
【GICU(General Intensive Care Unit):3ヶ月】
GICUでは、心臓外科の術後患者や病院内の重症患者に対し、全身管理や人工呼吸管理、薬剤管理、栄養管理、多職種とのチーム医療について学びます。診療看護師(NP)から直接指導を受ける機会が多く、患者を中心としたチーム医療における診療看護師(NP)の役割を学習することができました。
研修中は、指導医と共に担当患者の病態や治療に関して議論することができます。指導医や看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士などと行う多職種カンファレンスでは、実際に患者の経過や病態のプレゼンテーションを行うことで、患者の情報を整理することができました。さらに、多職種とディスカッションする機会も多いため、多職種の役割の理解することができ、専門職の意見を尊重しながら専門性を発揮する多職種協働について深く学習することができました。診療看護師(NP)として、病態を判断すると同時に、多職種の意見を聞き、患者のケアや治療が効果的に行うことができるように、チーム医療を推進してきたいと考えます。
GICUの診療看護師(NP)は、ICUの患者管理だけでなく、RRSの役割を担っています。医師との連携において、臨床推論や急変時の対応能力を深めていかなければならないと痛感しました。
【神経内科:3ヶ月】
神経内科では、症例を通して、解剖やCT・MRIの読影方法、疾患の必要な知識などの教育を受けることができます。神経学的所見の取り方なども、指導医から直接指導していただけるため、大変有意義な学習をすることが可能です。カンファレンスでは、新患症例のプレゼンテーションを行い、病態の理解をさらに深めることができます。
患者によって、症状や障害が違うため、社会復帰に向けての課題も個々で違います。残された機能を活かしながら生活できるように、病棟スタッフやPT・ST、MSWとの連携が必要となります。診療看護師(NP)として、医学的視点や看護の視点を活かしながら、多職種と連携し継続した支援につなげていきたいと思います。
◆今後について
当院の卒後研修プログラムは、医学的な知識や技術の学習を行うと同時に、高度実践看護師である診療看護師(NP)の役割についても学ぶことができます。これまで受けてきた教育を更に発展すべく、今後は病態生理と疾患や症候を結び付けて考える医学的な視点を深め、チーム医療においてそれぞれの専門性を発揮できるよう多職種と連携を図りたいと思います。さらに診療看護師(NP)が行う看護実践のあり方や役割を追求していきたいと思います。
JONPFレター No.8 診療看護師(NP)養成課程「地域・在宅実習」における学び 第1弾
地域医療・在宅医療の充実が求められている昨今、診療看護師(NP)養成課程では、地域や在宅で中心的な存在として医療提供を行うこと、また、地域や在宅の視点を持って急性期ケアを行うことなどを目的として、「地域・在宅実習」を行っている大学院があります。その実習における学びをご紹介します。
社会医療法人 緑泉会 米盛病院
看護部 (救急科) 王子野 豊
【自己紹介】
私は現在、鹿児島県の米盛病院救急科で診療看護師(NP)として活動しています。
診療看護師(NP)になる前は、集中治療室で6年間従事し看護師経験を積みました。その中で、病期の段階に関わらず入院から退院まで継続的かつ横断的に関わりたいという思いが高まり、大学院に入学しました。
大学院卒業後は、救急科を拠点とした院内の診療看護師(NP)役割の構築、特定行為実践環境体制整備、RRS(Rapid Response System)及びCCOT(Critical Care Outreach Team)活動の普及・教育という3つの軸を中心に活動を行なっています。
【実習の目的】
私が修学した国際医療福祉大学大学院の実習の特徴として、全国各地にクリティカル、プライマリ、離島や在宅など幅広い実習協力施設があり、その中から自分で選択することが可能です。そのため、就労している施設の役に立つと考えられる将来の診療看護師(NP)の活動を想定した実習施設を選択しました。
就労している施設は、ドクターヘリを所有しており、県内でドクターヘリの重複要請時に出動し、時には離島からヘリ搬送にて患者受け入れを行なっています。また、超急性期から慢性期、在宅までのシームレスな医療提供を行なっています。そのため、搬送元に多い離島や山間部(過疎地域)における医療体制を学び、地域特性を理解した診療看護師(NP)を目指す目的で実習先に離島や山間部での施設を選択しました。
【実習での学び】
実習では様々な診療看護師(NP)の需要性があることを認識することが出来ました。鹿児島県奄美群島の離島実習では常勤の医師が少なく、毎週輪番制で各科の専門医が勤務している状態であり診療科の垣根を大きく超えた医療介入が必要な場面も多々ありました。診療看護師(NP)の役割において、専門領域に特化した活動ではなく、ジェネラリストとして1人の患者様に対して病期の段階に関係なく入院時から退院時まで介入することの重要性を学びました。また、島外に搬送が必要な症例も経験し、行政機関を通じた搬送方法の選択や、搬送時の医療提供の方法など地域特有の診療看護師(NP)の役割を改めて考える場面が多くありました。
更に、島根県の山間部における実習においては、地域特性から超高齢者が多い中での意思決定支援や、院内だけでなく院外で連携している訪問看護ステーションなどに出向き、症例検討会や緊急時の連絡体制についてのディスカッションに参加する機会がありました。
実際に、離島や山間部などで実習を行うことで、それぞれの地域における診療看護師(NP)の最適な役割や需要性を学ぶことが出来ました。また、山間部の実習中に経験した症例を指導医の指導の下、英語論文化する経験をすることができました。我が国における診療看護師(NP)の普及は他諸国と比較すると進んでいない現状もあり、実践・経験したことを論文化し学術集会などの場で実際に発表していくことは今後の我が国の診療看護師(NP)の更なる発展に必須であることを再認識することができました。
【現在の活動に生きているところ】
現在、医師と共にドクターカーに同乗しプレホスピタルの場面から入院中、退院するまで一貫して1人の患者様のQOL向上への寄与のために介入しています。実習を通して、ジェネラリストの視点をもちながら、コメディカルスタッフとの連携を図り組織横断的に活動することが出来ていると考えています。
【今後の活動の展望】
自施設での診療看護師(NP)の役割の構築と施設が求めるニーズを把握しながら、チーム医療のキーパーソンとなれるように、多職種との信頼関係を図っていくことが重要であると考えています。また、地域特性を考慮しながら入院中だけではなく退院後の生活を踏まえた支援が行える活動を目指していきます。また、自施設の需要が高いとされるAcute Care Surgery分野での診療看護師(NP)の専門性の追求を目指していきたいと考えています。
JONPFレター No.7 看護実践能力の強化に向けて
公立邑智病院
看護部長/診療看護師(NP) 日高美晴
島根県公立邑智病院の日高美晴と申します。大分県立看護科学大学大学院で履修し、診療看護師(NP)として今年で8年目になります。50才前でのチャレンジでしたので、大学院の先生方はもちろん、同期の方にもいたわってもらいながら資格を取得することができました。今でも大変感謝しています。
私は、病院から派遣という大変恵まれた形で大学院に進学させてもらいました。当院は、医師不足に悩まされ続けていましたので、当時の管理者が、病態を理解しアセスメント能力に優れた診療看護師(NP)のような看護師が医師不足の部分を下支えし、地域医療に貢献できるだろうと判断したわけです。その後、当院から私と同じように1名の看護師が大学院に派遣され診療看護師(NP)の資格を取得しました。現在は看護部、診療看護の部署で診療看護師(NP)として2名で活動しています。
資格を取得してからの私のミッションは、看護の質の向上、医師の負担軽減、多職種との協働でした。自分自身の看護実践能力とともに看護部全体の実践能力を上げていくことを考えました。その活動のひとつとして、当初から続けていることがありますので、それについてご紹介します。
それは、看護師を対象に患者さんの病態や看護実践などについて話をすることです。朝、医局のカンファレンスに参加し、前日入院の患者のプレゼンテーションを一緒に聴きます。その情報を持って病棟のミーティングに参加し、情報提供をします。短い時間ですので、すべてを伝えることはできませんが、内容を凝縮して話をします。そうすると、みんな真剣に聴いてくれます。『目的は、看護師が病態を理解して看護実践に臨めること、そうすることで自分の看護にやりがいを持つこと』です。私自身もそうでしたが、画像なんて読影どころか患者さんの身体の状態と紐づけることができていませんでした。検査の指示が出ても、画像撮影のための搬送に終わるのが常でした。もう一歩踏み込んで、いっしょに画像を見て病態理解につなげる、こうこうこうだからこういうポジショニングが適切だろう、だからこの輸液が必要なんだ、とか、そんな根拠を持ってケアにあたることができればきっと自分自身のケアに自信を持ち、実践の成果を実感し看護のやりがいにつながる、と信じてこの活動を続けています。
今年度から看護部長に就任しました。臨床から少し遠のいてしまいましたが、もう1名の診療看護師(NP)とともに、外来での初期対応や看護部の教育などに携わっています。今はまだ慣れない管理業務に時間を取られ、現場の時間が少なくなったもどかしさを感じながらNPを続けています。当院は98床の小さな病院です。管理者ではありますが、プレイングマネージャーとして現場の感覚を大切にし、診療看護師(NP)の知識と経験を管理面に役立て、いい看護部、いい病院づくり、自律した看護師育成に注力したいと思っています。 よろしかったら、当院のホームページhttps://www.ohchihospital.jp/も是非ご覧ください。
JONPFレター No.6 NPの標準装備「POCUSエコー」のすすめ
順天堂大学医学部附属順天堂医院
NP準備室/心臓血管外科
診療看護師 重冨杏子
Point-of-care ultrasound(POCUS)とは、担当医療者自らが、ベッドサイドで、特定の目的に対してポイントを絞って超音波検査を行い、臨床状況と合わせて判断する超音波検査の総称です。検査項目を限定し、評価基準を明確化することで、非専門家でも習得しやすいのが特徴です。そのため医師だけでなく診療看護師(NP)や看護師への普及も期待されています。もともとは欧米で救急・集中治療領域から広まったコンセプトですが、過去10年間で世界的に普及し、入院患者管理、プライマリ・ケアや在宅医療での有効性が提唱されつつあります。簡便かつ非侵襲的、そしてなによりも身体所見にエコーという客観的データを付加することで、より正確で素早い判断を導くことができるPOCUSエコーは、診療看護師(NP)の臨床活動に非常に親和性が高く、標準装備したいスキルの一つといえます。
近年、様々な団体がPOCUSトレーニングコースを開催していますが、このたびJHospitalist Network(http://hospitalist.jp)が主催するJHN-POCUSコースでは診療看護師(NP)も受講可能となりました。本コースはもともと医師向けに実施されていたものですが、2018年に実施した調査では、診療看護師(NP)や特定行為研修修了看護師に対する教育効果だけでなく、コース受講後のエコー実施件数の増加といった効果が期待できる可能性も示唆されています(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36691022/)。
コースは2日間、座学+小グループ制のハンズオンで実施されます。エコーの基本的な走査方法から、領域別の描出と解釈まで、実践的な内容で構成されています。私自身も受講してみて、POCUSエコーは明日からでもすぐにベッドサイドで活用できるスキルであることを改めて実感しました。また今回、日本NP教育大学院協議会も本コースの後援となりました。診療看護師(NP)の中から指導者を育成し、同時に臨床研究も行いエビデンスを創出していくことで、さらなるPOCUSエコーの普及に努めていく予定です。
診療看護師(NP)や看護師がエコーを活用する場面は、これからますます増えていくことが予想されます。標準装備になるであろうPOCUSエコーを国際標準レベルで習得し、実践に活かしてみませんか。
JONPFレター No.5 医療MaaSでの無医地区巡回診療の実際
山口市徳地診療所
診療看護師(NP)中山法子
私はフリーランスの診療看護師(NP)として医療機関以外でも基礎自治体の予防保健事業や個人事業者として地域でのフットケア活動を行っています。このニュースレターではその中の業務の一つである、山口市徳地診療所(以下、診療所)での無医地区巡回診療の活動についてご紹介いたします。
山口市徳地(旧德地町)は、山口県の中山間部にあり、およそ5000人の人口で高齢化率は55%を越え、常勤医のいる医療機関は診療所だけです。私は非常勤診療看護師(NP)として現在毎週火曜日に外来を担当し、月2回の無医地区の巡回診療のうち1回のオンライン診療で現地の診療を担当します。なお巡回診療のもう1回は医師が現地で診療を行っています。
●巡回診療の概要
巡回診療を三谷地区は、巡回診療開始までは無医地区でした。地域にある三谷交流センター(旧三谷小学校)で巡回診療は実施しています。地域の方には交流センターまでは来ていただき、集うことで待合室でのコミュニティも大切にしていきたいというコンセプトを持っています。なお、交流センターまで自力で来られない方については、個別に医師が訪問診療をしています。 巡回診療車のシステムの概要は、メディカルムーバー(トヨタ車体)に遠隔診療デバイスとしてTeladoc HEALTH(ウィーメックス社)が搭載されています。ポケットエコー(Lumify)を装備し、リアルタイムで遠隔にいる医師が画像を確認することができます。
現地には診療看護師(NP)1名と、Ns2名、事務員1名(医師は診療所で待機)が配置されています。
診療の流れは、以下の通りです。 受付、②看護師による事前問診とバイタルサインチェック・トリアージ、③順番に車内診察室に移動(看護師による誘導)、④診療看護師(NP)による診察、⑤医師によるオンライン診療(with NP)、⑥調剤薬局によるオンライン服薬指導(with NP)、⑦待合室に移動(看護師による誘導)、⑧会計
●患者さんの声
①2023年10月以降5回実施(1回は大雪のため中止)、平均4名/回。
②同地区全世帯へのアンケート調査の中で、オンライン診療への不安について質問したところ、オンライン診療を利用した世帯からは「不安は全くない」「どちらでもない」という結果でした。
③現地での感想では、「近くで診察してもらえて、薬も自宅に届けてもらえて便利」や「わざわざ診療所にいって医師の診察を受けるほどの状態なのかなど、診療看護師(NP)にちょっとした相談ができて安心できた」などの声がきかれました。また、不安な表情で来所された80歳代女性は、総合病院を定期受診しているがよくならないと相談にこられました。診察の結果、喘息もしくは心不全が疑われたため、翌日に診療所を受診するように促しました。診察終了後に「本当に安心した。今日はここに来てよかった」と笑顔で帰宅されました。ほかにも診療件数にはカウントされませんが、後片付け中に体調の相談にこられたり、近所の独居高齢者のためにどんなことに注意したらいいかなどの質問にも対応しています。
●今後の展望
利用者数はまだ少ないのですが、診療看護師(NP)の診察とオンライン診療に不安を感じる患者はおらず、オンライン診療の役割は果たせていると考えます。メリットとしては医療アクセスが脆弱な地域に定期的に巡回診療することで、交通弱者も適切な間隔で医療が受けられ、重症化予防や異常の早期発見に貢献できています。また、看護職が主体となって地域住民に対応することで、医師には相談しづらい健康相談の機会が持てることで安心感につながっていると考えます。高齢者には難しくなってくる足の爪切りなどの身体的ケアも提供でき、健康増進にもつながる可能性を感じます。そして、無医地区の住民が助け合いながら暮らす力を健康面から支援できることにもつながる可能性があることにも気づきました。そこに看護の専門性が届くことで、気軽に相談でき、的確に医療に繋がり、適切な看護が展開できる場が創造できていると感じます。
2024年1月厚生労働省通知でオンライン診療の場所も拡大され、この6月からの診療報酬の改定では、へき地におけるD to P with Nに加算がつくことになりました。協働する医師からは、オンライン診療では患者の状況把握能や聞き取れる情報が限られていることから、現地にいる診療看護師(NP)の問診から患者の状況や背景を把握する能力やフィジカルアセスメント技術の重要性を聞きます。また、診療看護師(NP)からはオンライン診療では医師の診療、治療意図がしっかりと患者に伝わってないことがあることも現地では伺え、それを現地で補足していることも医師にフィードバックし、診療チームでも共有します。日頃からの医師、診療看護師(NP)の診療に関するコミュニケーションに努めています。現地で患者に対応する看護師の診療スキルやアセスメント能力が診療の精度を左右すると考えます。看護実践力に、診療の能力をトレーニングされている診療看護師(NP)の活躍の場は、へき地に限らず、どんどん広がることが期待されます。
JONPFレター No.4 四国でのNP活動〜7年間を振り返り、新たなスタートへ〜
倚山会田岡病院 救急科 診療看護師(NP)
海陽町立海南病院 総合診療科 診療看護師(NP)
谷口 宜子
●大学院卒業から7年間
私は徳島県で診療看護師(NP)をしています。大学院課程を卒業後、四国こどもとおとなの医療センターで麻酔科に所属していました。総合周産期母子医療センターを掲げており小児三次救急指定病院であったため、未熟児から高齢者まで幅広い患者に関わる機会を得ました。麻酔科所属として手術室を中心に活動していたこともあり、多科の手術助手をはじめ病棟業務なども幅広く経験させていただきました。ここでの経験は、急性期における診療看護師(NP)としての活動の幅を感じました。
後に東徳島医療センターに転勤になり、外科所属急性期をはじめ回復期・慢性期・療養期の患者と接することとなりました。直接指示による診療行為はもちろんのこと、患者がより快適に生活を送るために特定行為を実施する機会も多く、PICCや胃瘻交換、褥瘡対応など特定行為を含め、地域へ帰るための支援を中心に経験しました。ここでは、急性期病院とは違う、人生に寄り添う場面での診療看護師(NP)の可能性を感じました。
様々なシーンを経験した私は、診療看護師(NP)として地域ではどのような活動が求められているのかを考えるようになりました。地方ではまだまだ認知度が低く、徳島県でも協働する看護師や医師をはじめみな「どんなことをする人なの?」という反応です。そのような中で病院総合診療医学会のシンポジストとして招いていただき、「ひとをみる」という視点を持った同志や先生に出会ったことがきっかけとなり、新しいチャレンジをしてみようと決意しました。
●新しいスタート
2024年の4月から二次救急指定病院である倚山会田岡病院救急科で活動をしながら、徳島県の南端にある海陽町立海南病院総合診療科での活動を開始しました。海南病院では週に1回の非常勤となります。大変嬉しかったことは、診療看護師(NP)に来てもらいたいと総合診療科医師や海南病院の職員の方々に言っていただいたことです。勤務に伴い、近隣の病院・医療施設や医師会、県庁などにもご挨拶にお伺いもさせていただき、顔の見える関係づくりも行いました。
これからは、それぞれの病院長はじめ職員の方々や地域の皆さんの理解を得ながら、診療看護師(NP)として初めてのダブルワークが始まります。それぞれの地域に寄り添い、ニーズにあった医療の提供を目指しながらへき地医療も支えていけたらと思っています。
地域医療に興味がある方々、実習をしてみたいと思った方、ぜひ一度徳島にいらしてください。
<倚山会 田岡病院>
二次救急指定病院
徳島県徳島市万代町4丁目2-2
診療科:15科
病床数:199床
2023年度救急搬送受入件数:2349件
<海陽町国民健康保険 海南病院>
徳島県海部郡海陽町四方原字広谷16-1
診療科:内科・整形外科・外科・脳神経外科・総合診療科
病床数:一般病床30床(13:1) 地域包括ケア病床15床
JONPFレター No.3 2024年度能登半島沖地震におけるDMAT活動
藤田医科大学岡崎医療センター中央診療部FNP室
診療看護師(NP)宮崎友一
◆施設概要と活動
所在地 愛知県岡崎市針崎
当院は、愛知県西三河地区の医療偏在を打開すべく2020年4月開設された400床の2次救急医療機関です。ICU10床 HCU20床 診療科22科
当院には診療看護師(NP)4名が勤めており、主に救急科(ER)、麻酔科、心臓血管外科、循環器内科における業務に従事しています。私たちは、麻酔診療補助、手術や心臓カテーテルの助手を担いながら、一方で全員が救急科(ER)における初期診療に携わっている事が当診療看護師(NP)の特色と言えます。
◆2024年能登半島沖地震におけるDMAT活動にみる多職種連携、後方支援の重要性
2024年1月1日に発災した同震災において当院のDMAT(Disaster Medical Assistance Team)は初の実践参加となりました。当院は2023年に災害拠点病院として認可され、これを機に院内の潜在隊員を集め医師3名(内統括2名)、看護師6名(内診療看護師(NP)1名)、業務調整員2名でDMATを構成しました。これまで3度の訓練に参加してきましたが、チームとしての実践経験はなく院内の後方支援体制もまだ整備できていない状態でした。しかし、今回、元旦の発災にも関わらず同日17時には対策本部を立ち上げ、21時には出動の準備を整えるというスピード感で初動に当たることができました。これには普段の業務において多職種と「顔の見える、見知った」関係を築きながら仕事をしてきたことが重要であったと感じています。必要なME機器、薬剤、現地情報の収集などにおいて各関係部署に赴くと、人員も手薄で多忙な中で快く対応して頂きました。また、同僚である3人の診療看護師(NP)が、迅速に状況を把握し勤務調整や日常業務の後方支援を行なってくれました。元旦の本部の立ち上げから翌日の出動、5日間の活動が滞りなく遂行できたのはこの事に尽きると考えています。加えて私自身は1月23日から27日にも2回目の出動を拝命したため、その負担には頭が下がる思いです。本来、私たちはERの日勤(8:45-17:00)、中勤(12:30-21:00)、夜勤(16:30-翌09:00)を担っており、5日間の不在は日常業務を維持するのに大きな負担となります。そこを同僚達が快く引き受けてくれ、マイナス一人分を補填する業務を担ってくれました。災害医療は医療資源と医療ニーズのアンバランスによって被害が拡大していきます。そのアンバランスを是正するには所属部署の、ひいては病院全体の後方支援が必須です。医療者の人手不足が叫ばれる中、人員の確保に関する支援は最重要といっても過言ではありません。DMATというと派手なイメージもありますが、多くの隊員が、こうした後方支援に感謝しながら「現場に赴けばどんな仕事もやる」という気概で活動を行なっていると思います。
最後に私自身はこれまで2011年東北大震災では医療派遣で力が及ばなかったことを痛感し、2016年熊本地震では自身が被災しながら仕事を続ける難しさを学びました。2024年能登半島地震では、災害支援に関して一緒に考えらえる同僚に恵まれた事に感謝が尽きません。有事への備えは、平時の積み重ねです。引き続き平時の多職種や同僚との関わりを大切に業務に励みたいと考えます。最後に、今回の災害で命を落とされた皆様とそのご家族に心よりお悔やみを申し上げます。
JONPFレター No.2 救急外来でのチーム医療
地域医療機能推進機構仙台病院(JCHO仙台病院)
看護部 診療看護師(NP) 鈴木 孝平
◆病院概要
所在地:宮城県仙台市泉区
病床数384床 診療科20科 年間救急車受け入れ約2000台
◆診療看護師(NP)の活動内容
当院には診療看護師(NP)が5名勤務しています。所属は看護部で4名が病棟、1名が手術室配属です。
3名が診療看護師(NP)の活動を行っており、2名は各診療科のローテーション研修中です。
私は腎臓内科・耳鼻科・小児科の混合病棟及び救急外来で勤務しており、病棟看護師としての一般看護業務、救急外来での患者対応、PICCや手術助手等依頼を受けての診療看護師(NP)の活動と3種類の勤務をそれぞれ1週間毎ローテーションしながら活動しています。
◆救急外来でのチーム医療
当院に救急医はおらず、午前・午後当番制で救急担当医を決め、外来や手術等の通常診療と並行して救急車の対応を行っています。スタッフは診療看護師(NP)1名と病棟看護師2名、事務1名で回しています。
救急担当医 | |||||
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
AM | 消化器 | 総診 | 外科 | 総診 | 腎科 |
PM | 外科 | 整形 | 循内 | 総診 | 泌尿器 |
限られたマンパワーの中、素早い初期対応をするための取り組みとして、主訴から鑑別疾患を考え、処置物品などを事前に準備すること、エコー下での末梢確保や、検査の提案、優先度を考えた行動、コメディカルスタッフとの情報共有などを行っています。その他、特定行為・特定行為以外の診療の補助行為、患者・家族への病状説明の補助、など多岐にわたり現場で活動しています。
初めは診療看護師(NP)と医師のみで救急外来を回していましたが、救急車受け入れ件数の増加に伴い看護師の増員が必要となりました。診療看護師(NP)と看護部長で話し合いを行い、外科・整形外科病棟より1名ずつ救急外来へ応援に来る体制を作りました。病棟看護師へアセスメントや考えを伝えながら働くことで、フィジカルアセスメントや先を予測して行動する能力の向上が見られてきました。また入院後、注意して観察すべきポイントについても情報共有ができ、患者の安全や看護師のスキルアップにもなっており、良い連携の形が作れていると感じます。
◆課題と展望
現在、病院全体で稼働率が高く推移しており、ベッドが満床で救急車を断るケースがあります。「断らない救急」を実現するためには、限られた病床を効率よく回転させ、受け入れ病床を確保する必要があります。今後の課題のひとつとして、診療看護師(NP)とMSWが連携し、早期に介入することで平均在院日数の短縮化を図ることが必要と考えます。また、今後も病棟看護師への教育を行い、「アセスメントしタイムリーに対応できる看護師」を増やすことで、救急外来も円滑に回り、病棟での看護も安全と質が向上するのではないかと考えます。
JONPFレター No.1 第9回日本NP学会学術集会 特別企画
第9回日本NP学会学術集会 特別企画
「ナース・プラクティショナー(仮称)制度創設に向けたOne Voiceへの取り組みと課題」について
酒井博崇
総務理事/
広報委員長/制度検討委員
2023年10月20〜22日に北海道で開催された第9回日本NP学会学術集会(樋口秋諸大会長)において日本看護協会、日本看護系大学協議会、日本NP教育大学院協議会(以下、本協議会)の3団体による「ナース・プラクティショナー(仮称)制度創設に向けたOne Voiceへの取り組みと課題」と題した特別企画のイベントが行われました。
本協議会からは、著者が、以下の本協議会及び診療看護師(NP)の活動状況の概要を報告しました。
2023年4月1日現在の会員校は15校、本協議会が資格認定した診療看護師(NP)は 759名(うち、338名は、5年ごとの資格更新を修了)である。診療看護師(NP)は活動実績等をエビデンスとして学会誌等に数多く公表しているので、その一部を表1に示す。一方、本協議会は、2021年より定点調査として診療看護師(NP)を対象にした活動実態調査を行なっており、2022年活動実態調査の回答者は337名(50.2%)であった。回答者の多くが自由記載欄に意見等を記載しており、その内容を帰納的に分析した結果、①診療看護師(NP)の裁量範囲(「薬剤の選択と使用」「検査の必要性の判断と依頼」「施設・指導医師によって裁量範囲に差がある」など)、及び②診療看護師(NP)の立場・責任(「実施可能な範囲・立場が不明瞭」「責任の所在が不明瞭」「特定行為研修修了者との違い・規定がない」「診療報酬に結びつかない」「給与・処遇に結びつかない」「モチベーションの維持が難しい」など)が明確でないために、タイムリーな活動に制限があるとの赤裸々な意見が寄せられている。
3団体では、現在、「ナース・プラクティショナー(仮称)」の国家資格化を目指し、3団体間で、「ナース・プラクティショナー(仮称)」の役割・定義やコンピテンシー及び、コア・カリキュラムに関する検討を進めております。検討にあたっては、本協議会としては、7つのコンピテンシー(HP及び日本NP学会誌.4(2) 01-02(29-30)(2020)参照)をもとに、2008年から現在まで継続し実施してきた診療看護師(NP)の養成教育のカリキュラム(表2に示す修了要件55単位以上)、資格認定試験、資格認定更新制度、修了後研修などの経験、診療看護師(NP)の活動等に関するエビデンス、実態調査を通して診療看護師(NP)の皆さんから寄せられた意見などを反映していくようにしていきたいと思っています。
診療看護師(NP)によるエビデンスの公表が、「ナース・プラクティショナー(仮称)」の国家資格化に向けて社会を動かすことになると思っていますので、学術誌等に投稿していく努力が必要と考えています。