JONPFレター No.8 診療看護師(NP)養成課程「地域・在宅実習」における学び 第1弾
地域医療・在宅医療の充実が求められている昨今、診療看護師(NP)養成課程では、地域や在宅で中心的な存在として医療提供を行うこと、また、地域や在宅の視点を持って急性期ケアを行うことなどを目的として、「地域・在宅実習」を行っている大学院があります。その実習における学びをご紹介します。
社会医療法人 緑泉会 米盛病院
看護部 (救急科) 王子野 豊
【自己紹介】
私は現在、鹿児島県の米盛病院救急科で診療看護師(NP)として活動しています。
診療看護師(NP)になる前は、集中治療室で6年間従事し看護師経験を積みました。その中で、病期の段階に関わらず入院から退院まで継続的かつ横断的に関わりたいという思いが高まり、大学院に入学しました。
大学院卒業後は、救急科を拠点とした院内の診療看護師(NP)役割の構築、特定行為実践環境体制整備、RRS(Rapid Response System)及びCCOT(Critical Care Outreach Team)活動の普及・教育という3つの軸を中心に活動を行なっています。
【実習の目的】
私が修学した国際医療福祉大学大学院の実習の特徴として、全国各地にクリティカル、プライマリ、離島や在宅など幅広い実習協力施設があり、その中から自分で選択することが可能です。そのため、就労している施設の役に立つと考えられる将来の診療看護師(NP)の活動を想定した実習施設を選択しました。
就労している施設は、ドクターヘリを所有しており、県内でドクターヘリの重複要請時に出動し、時には離島からヘリ搬送にて患者受け入れを行なっています。また、超急性期から慢性期、在宅までのシームレスな医療提供を行なっています。そのため、搬送元に多い離島や山間部(過疎地域)における医療体制を学び、地域特性を理解した診療看護師(NP)を目指す目的で実習先に離島や山間部での施設を選択しました。
【実習での学び】
実習では様々な診療看護師(NP)の需要性があることを認識することが出来ました。鹿児島県奄美群島の離島実習では常勤の医師が少なく、毎週輪番制で各科の専門医が勤務している状態であり診療科の垣根を大きく超えた医療介入が必要な場面も多々ありました。診療看護師(NP)の役割において、専門領域に特化した活動ではなく、ジェネラリストとして1人の患者様に対して病期の段階に関係なく入院時から退院時まで介入することの重要性を学びました。また、島外に搬送が必要な症例も経験し、行政機関を通じた搬送方法の選択や、搬送時の医療提供の方法など地域特有の診療看護師(NP)の役割を改めて考える場面が多くありました。


更に、島根県の山間部における実習においては、地域特性から超高齢者が多い中での意思決定支援や、院内だけでなく院外で連携している訪問看護ステーションなどに出向き、症例検討会や緊急時の連絡体制についてのディスカッションに参加する機会がありました。
実際に、離島や山間部などで実習を行うことで、それぞれの地域における診療看護師(NP)の最適な役割や需要性を学ぶことが出来ました。また、山間部の実習中に経験した症例を指導医の指導の下、英語論文化する経験をすることができました。我が国における診療看護師(NP)の普及は他諸国と比較すると進んでいない現状もあり、実践・経験したことを論文化し学術集会などの場で実際に発表していくことは今後の我が国の診療看護師(NP)の更なる発展に必須であることを再認識することができました。

【現在の活動に生きているところ】
現在、医師と共にドクターカーに同乗しプレホスピタルの場面から入院中、退院するまで一貫して1人の患者様のQOL向上への寄与のために介入しています。実習を通して、ジェネラリストの視点をもちながら、コメディカルスタッフとの連携を図り組織横断的に活動することが出来ていると考えています。
【今後の活動の展望】
自施設での診療看護師(NP)の役割の構築と施設が求めるニーズを把握しながら、チーム医療のキーパーソンとなれるように、多職種との信頼関係を図っていくことが重要であると考えています。また、地域特性を考慮しながら入院中だけではなく退院後の生活を踏まえた支援が行える活動を目指していきます。また、自施設の需要が高いとされるAcute Care Surgery分野での診療看護師(NP)の専門性の追求を目指していきたいと考えています。

